Thursday, 5 March 2009

太陽の中の太陽 __ カール・シュレイダー

460ページ。これくらいが良いです。最近、少し癖のある話ばかり読んでいたので、ひさしぶりに、安心して読める本でした。名作だと思います。あと 二巻あるのが楽しみ。中原尚哉の訳も安心して読める理由だと思う。

微重力下の世界という設定は、ニーブンにもあった気がしますが、こちらの方が良い意味で荒唐無稽。艦隊戦と白兵戦、そしてバイクというのを、世界観に合わせて、うまく再生していると思います。

物語の語り方が秀逸。無理な謎解きではなく、登場人物の立場から「これは今は話せない」的な謎を導入するので、自然に語られる感じです。人物の行動の背景に説得力があります。エアリー、スリップストリーム、ファルコンの国レベルの戦い、それに対する人々の立場、そして、復讐や愛、祖国愛、未来とかが、幾何学的ではない有機的な絵として描かれてます。

人工現実と言うヴァーガ世界の外の設定が荒唐無稽さに説得力を持たせているのも素晴しい。仮想現実とかよりも、良く考えられていて、しかも、この話では「さらっと」しか触れてない。そこに見える人工現実への恐れとか、人工現実から見た現実へのあこがれとかを裏に織り込んだ手法も見事だと思います。

移動都市と読後感は似てますが、完成度と技術がはるかに上ですね。リンダ・ナガタのナノマシン・シリーズとも似た感触がありますが、物語と人物像が素直なだけ読みやすいです。

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