田中尚夫先生の本ですね。2016改訂か、偉いなぁ。公理論的集合論の方は昔買って結構読んだ。推移集合までは理解したと思うが、強制法はまだちょっと。
集合論のモデルはBool代数を使う方が現代的らしく、そういう本がないかなと思っていたんですが、この本がちょうど良いみたい。ただ、少しはっしょってあるけど。
選択公理ができた頃の歴史的な話も出ていて面白いです。カントールは割と不幸な感じだったんだけど、ツェロメルが整列定理と選択公理の同等性を示したことで、むしろ、
整列定理は他の定理から証明されそうにない
というのと、
選択公理が使われている定理が既にある
ってのを明らかになって事態が進んだみたい。最初に、ツェロメルが選択公理どうよと書いたら、いろいろ書簡が飛び交って、
そんなのやだ〜
という反応。ここで出てくる名前がすごくて、ハイネとかボレルとかアダマールとかベールとかペアノとか。ペアノ先生なんか「ペアノの公理からでないからダメ」とか言ってたらしい。
ところが、ルベーグ先生の証明で、こっそり選択合理が使われているとかがわかってしまって、批判的だったフランスの数学者たちが沈黙してしまったとか載っていて面白いです。
選択公理を使った定理や、選択公理と同等の定理も豊富に載ってます。特にチコノフの定理から選択公理を導出するとか、選択公理からベクトル空間の基底の存在を導くとか載ってます。割と最近の成果の基底の存在から選択公理を導くのは残念ながら載ってません。
選択公理の独立性の証明はブール代数を使った集合論のモデルから超フィルターと進みますが、後半は公理論的集合論とほぼ同じ構成かな。公理論的集合論も連続体仮説のところは少し力尽きてたんですが、この本でも連続体仮説の独立性まではやらないようです。それは、シェーンフィールド読めってことか。
コーエン先生の本だと「選択公理を仮定しない方向に数学は進む」とか書いてあったりしますが、この本の立場は「選択公理有用だから積極的に使おうぜ」な感じですね。
可算集合の可算和は可算集合
を示すには選択公理が必要というのは、かなり説得力あるかな。
選択公理を否定すると集合の濃度の定義にも苦労するらしく、有限集合と無限集合の区別も曖昧になるので、むしろ難しくなる感じ。
整列定理は推移集合モデルから直接的に出てくるので、集合論の整合性も直観的にわかるし、自明な感じがします。
ただ物理世界に無限があったら、それに選択公理が成立するかと言うと、それは期待できないかな。
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