Friday 30 January 2009

現代倫理学入門__加藤尚武

この程度だと、中学生のうちに片付けておいてくれよ、という感じの本です。今の大学生って自分にかまけすぎていて、こういう視点にはなれないのかも。自分が、そんなに大切なら、むしろ、こう言うところから始めるんじゃないかな。

世の中は物理法則に従って進んでいるわけだけど、じゃぁ、人間が従って生きていくべき法則はあるのか? この本だと、そんな風に倫理学を説いていきます。結局、功利主義や論理学的考察からは何も出てこないという結論なわけだけど。そう言えば、吉田夏彦先生も「哲学からは人生論は出て来ません」みたいなことを言ってました。

でも、物理法則も理解できてないなら、倫理学も無理なんじゃないかと思う。力学の一つの基本原理は、

 同じ状態からは同じ結果が得られる

だったりしますが、これに時間や空間、因果関係などの対称性を考慮するだけで、かなりの部分の問題が解けます。

と言うわけなので、倫理学が、功利主義や普遍性から法則を導き出せなくても、まったく結論が出せないというわけではない。

一方で、今の物理理論は量子力学だから、同じ結果と言うのは「同じ確率分布」だったりする。

完全な平等やみんなが納得する分配というのはアローの定理があるので存在しないわけだけど、確率的な分布であれば、安定した分配があるかも知れない。

この本には「人類に残された200年で人類は何をするのか」と言う視点が欠けていると思う。「人はどう生きるべきか法則」は、かなり任意で、それは力学系を決定するハミルトニアンに任意性があるのと同じ。それは、何をするべきかはわからない。

原発の危険性に関する議論で西部邁が「人類は単に生き残ればいいのか?」みたいな問いかけを出していました。どうせ、200年ならば、リスクがあっても原発を使って何が出来るかを考えた方が良いと言う風に理解しましたが、廻りからは無視されてましたね。

まぁ、あんまり突き詰めて考えると、他の人達の道から外れしまうので、どうかと思いますが、他の人ばかり見てても埋もれてしまったことに嘆くことになるだけなので、一通りは考えておくのが良いかな。

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